画像検査装置とは|検出範囲や導入するメリット

多くの工場で深刻な問題となっている「人材不足」。少子高齢化による労働力不足の影響を受けて、従業員の確保が課題となっている企業は多いといえます。
人材不足は、作業者を増やすことだけでなく、生産ラインを見直すことでも解消できます。例えば、目視で行っている検査工程を自動化する目的で「画像検査装置」を導入するのが効果的です。
この記事では、画像検査装置の仕組みや検出できる範囲、導入するメリット・注意点について解説します。
目次[非表示]
- 1.画像検査装置とは
- 2.画像検査装置の仕組み
- 2.1.画像入力(撮像)
- 2.2.前処理
- 2.3.検査・計測処理
- 2.3.1.ルールベースの画像検査の場合
- 2.3.1.1.登録する規則や基準の例
- 2.3.2.AI搭載画像検査装置の場合
- 2.3.2.1.良品・不良品を学習させる
- 2.3.2.2.学習結果をテスト・改善する
- 2.4.判定・出力
- 2.5.フィードバック(必要に応じて)
- 3.画像検査装置で検出できる欠陥の範囲
- 4.画像検査装置を導入するメリット
- 4.1.人材不足を軽減できる
- 4.2.生産性の向上
- 4.3.トレーサビリティの強化
- 5.画像検査装置の導入には注意点もある
- 6.まとめ
画像検査装置とは
画像検査装置とは、「画像処理システム」「画像センサ」「画像組み込みシステム」などと言われる、自動化された検査システムのことです。これまで作業者が目視で行っていた検査工程を、カメラを「目」に、コントローラを「脳」として機械が自動で判断できるようにします。
この仕組みでは、外観検査(色や形状の確認、欠陥の有無)や寸法測定、位置合わせ(アライメント)、さらには印字や文字・バーコードのチェックまで、多種多様な検査を自動化します。
画像検査装置を利用すれば、作業者の見落としや間違えといった人為的なミス(ポカミス)が防止できます。また撮影した画像や取得した数値データを保存しておくことで、製品ごとの履歴管理やトレーサビリティの確保にもつながります。
画像検査装置は基本的に、カメラ・処理装置(コントローラ)・ソフトウェア、照明の4つで構成されます。製品または部品をカメラで撮影し、システム上で画像データを処理します。
最近ではAI搭載の画像センサも登場しており、「学習した良品と不良品の画像」と「撮影した対象物の画像」を比較して良否判定を行います。
画像検査装置の仕組み
画像入力(撮像)
生産ライン上を流れてくるワーク(検査対象物)を、トリガー信号(外部からの信号や時間トリガー)に基づいて、カメラで撮影します。
この際、ワークの材質、表面状態、検査したい欠陥の種類に応じて、最適な照明(MDMC照明など)とカメラ(解像度、感度など)が選択されます。例えば、凹凸を強調したい場合は斜めからの照明、透明なワークにはバックライトなどが使われます。
前処理
撮影された生画像には、ノイズや検査に不要な情報が含まれていることがあります。これらを除去したり、欠陥を強調したりするために、様々な画像処理フィルタを適用します。
例:
- ノイズ除去フィルタ: 画像のランダムなノイズを取り除き、処理を安定させます。
- エッジ強調フィルタ: 欠陥の輪郭を鮮明にし、検出を容易にします。
- 濃度補正・均一化: 照明ムラなどを補正し、画像全体の明るさを均一にします。
検査・計測処理
前処理された画像に対して、設定された検査ツールや計測ツールを実行します。
ルールベースの画像検査の場合
人間が登録したルール(しきい値などの条件)に基づいて検査をします。そのため、あらかじめ良否の規則や基準を登録します。具体的には、キズや異物等の形状、大きさ、色などを検出する処理や、本来あるべき部品やラベルの有無などがその対象です。
不良品と判定した場合に、理由がはっきりとわかるメリットがありますが、複雑な背景や光沢ばらつきが大きい検査などには向きません。
登録する規則や基準の例
- 位置決め:ワークの位置や向きのズレを補正し、正確な検査領域を特定します(例:形状サーチ機能)。
- 欠陥検出:事前に設定された基準(明るさ、色、面積、形状など)に基づいて、傷、汚れ、バリ、欠け、異物などの欠陥を検出します。例えば、特定の領域で設定値以上の輝度変化があった場合に「キズ」と判定したり、基準となるパターンとの差分を検出したりします。
- 寸法計測:ワークの長さ、幅、直径、穴ピッチなどを高精度に計測し、公差内にあるかを判定します。
- 文字・コード認識:製品に印字されたロット番号やシリアル番号、2次元コードなどを読み取り、情報を取得します。
AI搭載画像検査装置の場合
AI搭載画像検査装置を利用すれば、複雑な背景など、ルールベースでは難しい検査でもAIに学習させれば可能になる場合もあります。
ただしAIの良否判断となるため、どのような基準で判定しているのかが直感的にわかりにくいというデメリットがあります。
良品・不良品を学習させる
AI搭載画像検査装置では「あらかじめ登録した良品と不良品の画像」と「撮影した対象物の画像」を比較して良否判定を行います。そのため、まずは良品・不良品にどのような違いがあるのか、画像を用いて学習させます。
AI学習の精度を上げるため、より多くのパターンの画像を用意するのがポイントです。
学習結果をテスト・改善する
学習によって得られた結果の評価を実施します。
良品なのにNG判定や、不良品なのにOK判定などの誤判定がある場合、再度学習させることでより精度の高いモデルを生成することができます。
判定・出力
検査・計測結果に基づいて、「良品」か「不良品(NG)」かを判定します。
判定結果は、生産ラインのPLCや上位システムに信号として出力されます。これにより、不良品の排出、アラームの発報、ラインの停止などの制御が行われます。
検査画像や検査結果データは、必要に応じて保存され、品質管理やトレーサビリティのために活用されます。
フィードバック(必要に応じて)
検査で得られたデータは、生産工程の改善にフィードバックされることがあります。例えば、特定の欠陥が頻発する場合、その原因を究明し、製造条件の調整などに役立てます。
画像検査装置で検出できる欠陥の範囲
画像検査装置で検出できる欠陥には、汚れや傷、割れ、欠け、バリ、変形、異物などがあります。これらをヒューマンエラーを起こさず検出できるため、安定的に欠陥を見つけ出すことが可能です。
業界別では、以下のような欠陥を検出できます。あくまで一例ですが、画像検査装置を活用することでこれだけの欠陥の有無を判断できると、生産ラインの効率化が期待できます。
▼業界別に見る画像検査装置で検出できる例
業界 | 検出できる欠陥 |
---|---|
食品業界 |
|
金属業界 |
|
医療業界 |
|
電子機器業界 |
|
画像検査装置を導入するメリット
画像検査装置を導入することには、さまざまなメリットがあります。
人材不足を軽減できる
まず挙げられるのが「人材不足を軽減できる」というメリットです。従来は目視で行っていた外観検査を画像検査装置に一任できるため、担当作業者を別の業務に回すことができます。
これまで外観検査や印字確認といった作業は、熟練した作業者が一つひとつ目視で行ってきました。しかし、人手による検査は集中力や経験に依存するため、長時間続ければどうしても見落としや判断のばらつきが生じやすくなります。さらに、近年は人材の確保自体が難しく、熟練者の育成にも多くの時間とコストが必要です。
画像検査装置を導入すれば、機械が常に同じ基準で検査を行うため、人材不足による影響を大幅に軽減できます。これにより、限られた人員をより付加価値の高い業務や生産管理、改善活動に充てることができ、現場全体の働き方改革にもつながります。
生産性の向上
次に挙げられるのが、生産性の向上です。人の目視検査に比べ、画像検査装置は処理スピードが圧倒的に速く、かつ安定した精度で検査を実施できます。
たとえば、わずかな傷や色の違いなど、人の目では判断が難しい微細な不良も高精度に検出できるため、不良品の市場流出を防止できます。検査精度が高まれば、再検査や手直しにかかる工数を削減でき、結果として生産ライン全体の処理能力が向上します。また、機械による検査は疲労や体調による影響を受けないため、夜間や長時間稼働の現場でも安定した品質保証が可能です。
トレーサビリティの強化
さらに、トレーサビリティの強化も大きなメリットのひとつです。
画像検査装置は検査時に撮影した画像や数値データを保存できるため、製品ごとに「いつ、どのような検査が行われたのか」という履歴を残し、不良品の発生原因の究明と歩留まりの向上に活用することができます。
加えて万が一、市場で不具合が発生した場合でも、過去のデータをさかのぼって原因を特定したり、影響範囲を迅速に把握したりすることができます。これは顧客対応の迅速化に大きく貢献し、企業の信頼性を高めることにつながります。さらに、保存データはISO規格や各業界で求められる品質管理基準への対応にも有効であり、国内外のサプライチェーンにおける取引条件をクリアする上でも重要な役割を果たします。
このように、画像検査装置は単なる検査装置としての機能にとどまらず、品質保証体制を支える基盤として活用できるといえます。
画像検査装置の導入には注意点もある
画像検査装置の導入にはメリットがある一方で注意点もあります。
まず、画像検査装置の導入には費用がかかります。自社の予算と環境、検品対象物を考慮し、慎重に導入を検討することが重要です。
また、画像検査装置の導入にあたって技術力も必要になります。扱える作業者がいない場合は、新たに採用したり自社で教育したりしなければならず、その分の費用や時間も必要です。導入費用を含めて合計でいくらかかるのか算出し、早期にコストを回収できるかシミュレーションしたうえで導入を検討するのがおすすめです。
ただし、画像検査装置のなかにはこれらの注意点をカバーできる機種もあります。『SKソリューション株式会社』では、画像処理の専門スタッフが丁寧にご相談を承ります。
お客様のご要望をしっかりとお伺いしたうえで、実現可能性の検討やテストを行い、最適なソリューションをご提案いたします。
検査工程の自動化・省力化をご検討中の方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
▶︎画像検査に関するご相談| テスティング 申込
▶︎画像検査_独自技術によるコストカットのご提案 | SKソリューション株式会社
まとめ
この記事では、画像検査装置について以下の内容を解説しました。
- 画像検査装置とは、対象をカメラ(目)とコントローラ(脳)で判断させる検査システムのこと
- 画像検査装置を導入することには「人材不足を軽減できる」「生産性が向上する」「品質の安定につながる」などのメリットがある
- 画像検査にはルールベース画像検査とAI画像検査があり、それぞれにメリット・デメリットがある
- 画像検査装置で検出できる欠陥には、汚れや傷、割れ、欠け、バリ、変形、異物などがある
画像検査装置は、不良品の流出を防ぐと同時に、人材不足の解消や生産性の向上、品質の安定化を叶える装置です。導入するにあたって費用や技術力が必要になるものの、画像検査装置があることで得られるメリットは大きいため、活用を前向きに検討するのもよいかもしれません。ぜひ参考にしてみてください。
『SKソリューション株式会社』では、協働ロボットの導入を含むファクトリーオートメーションの要件定義から、システムの構築・設計、設置工事、立ち上げまでトータルサポートします。生産技術者のリソース不足を解消しながら自動化を実現できるのが強みです。また、本社のショールームにてさまざまなロボットを使った事前検証をご覧いただくことも可能ですし、デモ機を体験いただける出張にも柔軟に対応しています。「どのようにファクトリーオートメーションを導入したらよいか分からない」という場合は、どうぞお気軽にお問い合わせください。